2020年に読んだ本
2020-12-29 23:20 (3 years ago)

2020 年の振り返りの一貫として、今年読んだ本とその感想をそれぞれ簡単にまとめました。

まずタイトルの一覧を示し、感想はその下に書きます。

読んだ本(タイトルの一覧)

  1. プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識 - 矢沢久雄(日経ソフトウエア)
  2. リーン・スタートアップ - エリック・リース、伊藤 穣一、井口 耕二(日経BP)
  3. ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? - ダニエル・カーネマン、村井章子(早川書房)
  4. ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? - ダニエル・カーネマン、村井章子(早川書房)
  5. ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム - クレイトン M クリステンセン、タディ ホール、カレン ディロン、デイビッド S ダンカン、依田 光江(ハーパーコリンズ・ ジャパン)
  6. ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識 - 戸根 勤(日経BP)
  7. ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版] - Robin Williams、米谷 テツヤ、小原 司、吉川 典秀(マイナビ出版)
  8. けっきょく、よはく。 - ingectar-e(ソシム)
  9. 起業の科学 スタートアップサイエンス - 田所 雅之(日経BP)
  10. Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES) - アッシュ・マウリャ、渡辺 千賀、エリック・リース、角 征典(オライリージャパン)
  11. ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか - ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ、瀧本 哲史、関 美和(NHK出版)
  12. 絶対に挫折しないiPhoneアプリ開発「超」入門 第7版 【Xcode 10 & iOS 12】 完全対応 - 高橋 京介(SBクリエイティブ)
  13. React.js & Next.js超入門 - 掌田津耶乃(秀和システム)
  14. 詳論 文化人類学 - 桑山 敬己、綾部 真雄(ミネルヴァ書房)
  15. すごいHaskellたのしく学ぼう! - Miran Lipovača, 田中 英行, 村主 崇行(オーム社)
  16. 数学ガールの秘密ノート/やさしい統計 - 結城浩(SB Creative)
  17. 完全独習 ベイズ統計学入門 - 小島 寛之(ダイヤモンド社)
  18. 論理学 - 野矢 茂樹(東京大学出版会)
  19. 数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3) - 結城浩(SB Creative)
  20. ちくま評論選―高校生のための現代思想エッセンス - 岩間 輝生、佐藤 和夫、坂口 浩一(筑摩書房)
  21. ひとのことばの起源と進化 - 池内 正幸(開拓社)
  22. 社会思想史を学ぶ - 山脇 直司(ちくま新書)

感想

  1. プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識 - 矢沢久雄(日経ソフトウエア)

    実は 2019 年からちょこちょこと読み始め、今年の 2 月頃に読み終わった本。メモリやレジスタ、アセンブラなどの低レイヤーの話や、データ圧縮のアルゴリズムなど、日頃あまり学べない内容が噛み砕いて説明されており、視界が開けたように思う。
  2. リーン・スタートアップ - エリック・リース、伊藤 穣一、井口 耕二(日経BP)


    あまりにも有名な本だが、読んだことがなかったので今年の 1 月頃に読んだ。MVP (Minimum Viable Product; 実用最小限の製品) の概念や「構築 -> 計測 -> 学習」のサイクル、革新会計などの概念が実例付きで詳しく説明されておりわかりやすかった。今やこの本の内容は古いとされたり、いろいろと反対意見も提示されたりしているが、これを読んだ当時、メガバンクというスタートアップとは真逆の組織に所属していた自分にとってはかなり新鮮な内容で学ぶところが大きかった。
  3. ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? - ダニエル・カーネマン、村井章子(早川書房)

  4. ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? - ダニエル・カーネマン、村井章子(早川書房)

    今年読んだ中で一番面白かった。読み始めたきっかけは、人工知能研究の関連で Yoshua Bengio の論文 The Consciousness Prior を読んだこと。その論文の中で、人間の知能は直感的・無意識的な「システム 1」と論理的・事務的・意識的な思考を行う「システム 2」に分けられ、現在のディープラーニングは前者を得意とするが、後者をも扱えるようにしていく必要があるという内容が語られており、本文中や参考文献の中でこの本が引用されていたため興味を持ったのであった。実際に本書を読んでみたところ、速い思考(システム 1)と遅い思考(システム 2)とはどういったものかということ、速い思考による直感的な判断と遅い思考による意識的な判断の食い違い、それによって生じるバイアス、不合理な判断などが数々の実験とともに記述されており、非常に面白かった。ベイズ推定や行動経済学、政策決定の話など、扱う話題も多岐にわたり、読み進める手が止まらなかった。
  5. ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム - クレイトン M クリステンセン、タディ ホール、カレン ディロン、デイビッド S ダンカン、依田 光江(ハーパーコリンズ・ ジャパン)

    今年亡くなったクリステンセンの著作。顧客の生活をつぶさに観察し、顧客が解決したいと思っている「ジョブ」をいかにして発見するかということが述べられた本。冒頭で述べられるミルクシェイクの例が一番印象に残っている。アメリカの話ではあるが、自動車通勤をする顧客には、長時間の通勤途中、車内で時間をかけて退屈をしのぎながら空腹を満たしたいという「ジョブ」があり、そのジョブを解決するためにミルクシェイクという製品を「雇う」。運転中に口に運ぶものだからバナナやベーグルなどより優れており、また、すぐ飲めてしまうコーヒーなどより、時間をかけて飲めるミルクシェイクがまさっているという例であった。一方、朝の通勤時ではなく夕方の時間帯には、子供にミルクシェイクを買ってあげていい格好をしたいお父さんがターゲットになり、その場合は、(朝にはバナナやコーヒーが競合だったのに対し)「子供とキャッチボールしてあげること」など、別の “いいお父さん” でいるための手段が競合相手となる。このようにジョブは顧客の生活をつぶさに観察しなくてはわからないし、置かれた状況によってターゲットや解決するジョブが異なり、また、競合は他社のプロダクトだけでない(場合によっては「何もしないこと」(無消費)も競合となる)のである。
  6. ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識 - 戸根 勤(日経BP)


    ブラウザに URL を入力してからウェブページが表示されるまでの、ハードウェアやソフトウェアの動きを追いかけていくというコンセプト。HTTP のメソッド(GET, POST, DELETE, ...)、リクエスト・メッセージとレスポンス・メッセージ、それらのヘッダーなどの、フロントエンド開発において普段から意識する部分(アプリケーション層)の話から TCP/IP、データリンク層や物理層の話まで、事細かに書かれている。多くの概念や用語が出てくる一方、読み物として読み進められるよう意識したのだろうが、平易な言葉遣いで記述されている。そのぶん文章量が長くなっており、個人的にはかえって読みづらいと感じた部分も少々あった(文章のせいではなく、自分の理解が足りていないことに起因する問題だとする説も有力)。
  7. ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版] - Robin Williams、米谷 テツヤ、小原 司、吉川 典秀(マイナビ出版)


    Web フロントエンドを扱ううえで、デザインについても知っておきたいと思ったので読んだ。「近接」「整列」「反復」「コントラスト」という 4 つの基本原則や、カラーの使い方、フォントに関することなど、デザインの基礎を学べた。もちろん、本書では触れられていないいろいろな考え方やテクニックも存在するのだろうし、トレンドやツールなど、まだまだ知らないことだらけではあるが、それでもデザインというものが「まったく得体の知れないもの」から、「系統だった知識をベースに扱うことができるもので、その基礎となる原則もいちおう知っている」というレベルに持ってこれたのは大きい。
  8. けっきょく、よはく。 - ingectar-e(ソシム)


    デザインに限らずなんでもそうだが、複数の情報源から知識を得ることは重要だと思うので、デザイナーズ・デザインブックを読んだ次に読んだ。余白を活かしたデザインレイアウトの本ということで、どのように余白を配置するかといったことが説明されているが、それに限らず、色使いやフォントなどデザイン一般についてもしっかりと記述されている。「お店のチラシの例」「会社案内のパンフレットの例」「イベントのポスターの例」など、具体的なシチュエーション別に、OK 例と NG 例を添えて説明されているのでわかりやすい。
  9. 起業の科学 スタートアップサイエンス - 田所 雅之(日経BP)


    こちらも有名な本。『リーン・スタートアップ』と共通する内容も多いが、MVP を作る前に Plan A の作成を行い、続いて Customoer Problem Fit, Problem Solution Fit を経ることを提唱しているなど追加的な内容も含んでいる。また、図をふんだんに使い、諸々の方法論がわかりやすくまとめられている。
  10. Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES) - アッシュ・マウリャ、渡辺 千賀、エリック・リース、角 征典(オライリージャパン)


    副題の「実践リーンスタートアップ」のとおり、『リーン・スタートアップ』の考え方を実践に移すためのガイドとでも言うべき本。リーン・キャンバスの作成方法や顧客へのインタビューの仕方など、具体的なケーススタディを通じて理解することができる。
  11. ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか - ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ、瀧本 哲史、関 美和(NHK出版)


    『リーン・スタートアップ』を読んで感銘を受けた後、同書(リーン・スタートアップ)へのアンチテーゼであるということで興味を持ち読んだ本。世の中に存在する、多くの人が気づいていない隠れた真実は何か? それを見つけ、市場を独占し、なおかつ長期にわたって存続しよう、ということが語られている。スタートアップやイノベーションが本書のトピックのひとつであるのは間違いないが、実際には社会のあり方全体について問題提起しているように見受けられる。分散投資が常識となったポートフォリオ理論や、それに基づいて行動する機関投資家、銀行、民間企業はみな、将来が予想できないから宝くじを買うかのように運任せに行動(投資)するしかないのだと言い、一方で「べき乗則」によれば、一握りのスタートアップが、その他すべてのスタートアップを足し合わせたよりも大きい価値を生むのだから、ランダムに分散するのではなく、その一握りの企業を見極める必要があると言う。今のは投資家(ベンチャーキャピタル)側の話だが、スタートアップ側においても、計画を立てず MVP を作って目の前の顧客の要望に答えているだけではグローバルな拡大は成し遂げることができないのだと主張する。まさにその意味で、『リーン・スタートアップ』の考え方は、既存のポートフォリオ理論などが立脚する、将来のことは予想できないから運に任せようという発想と軌を一にしているのだと喝破する。そして、そうではなく、世の中の隠れた真実を探し、運任せなどではなく、自分の行動によって市場を独占していこうと主張する。
    この本はリーン・スタートアップへの反対意見の代表格のような扱いがなされているし、著者ピーター・ティール自身も本書の中でかなり直接的にリーン・スタートアップを批判しているが、両者に共通する部分も少なからず存在するように見受けられた。ピーター・ティールは、運に任せて場当たり的に物事を解決していこうとする方法論のようなものとしてリーン・スタートアップを捉えている印象だが、実際にはリーン・スタートアップでは検証による学びを繰り返すことの重要性が説かれていて、必ずしもその批判が当たるものではない気がするし、「小さく始めて市場を独占する」という考え方は両者に共通するところだろう。
    さて、以上のように、本書は単なるスタートアップの方法論ではなく、かなり思想的な色彩も濃く(上記ではポートフォリオ理論などを引き合いに出す部分の説明に留めたが、実際にはアリストテレスやヘーゲル、ジョン・ロールズなど哲学の話まで登場する)、読者を選ぶ可能性もある。ただ、0 から 1 を生み出すイノベーションやスタートアップという文脈では、まさにそういった強い思想も重要になってくるのかもしれないし、真に迫る内容だった。
  12. 絶対に挫折しないiPhoneアプリ開発「超」入門 第7版 【Xcode 10 & iOS 12】 完全対応 - 高橋 京介(SBクリエイティブ)


    昨年にも一度読んだ。今年、前職在籍中にモバイルアプリ開発の研修を受け、それもあり今年改めて自分でも Swift を勉強し直し、そのときに使用した。Xcode や Storyboard など、GUI の操作も多い iOS アプリ開発に関して、カラーの図付きで説明されておりわかりやすい。Swift の基本文法、Storyboard の基本的な操作方法、それらによる基本的なアプリ(カメラアプリや RSS からニュースを取得して表示するアプリなど)作成方法を学ぶことができる。Swift の文法は好きだけど、Xcode や Storyboard の操作性の不安定さだったり、アプリのリリースに審査が必要である点や、iPhone の新機種では○○が搭載されたからそれに対応しなくてはいけない、みたいな問題が発生するという感じで Apple の動向に強烈に縛られることなどを考えると色々と億劫になり、結局まともにモバイルのネイティブアプリ開発に乗り出せないでいる(Android アプリに触れず iOS アプリにのみ言及しているのは自分が持っているのが iPhone であるため)。
  13. React.js & Next.js超入門 - 掌田津耶乃(秀和システム)


    React のみならず Redux、Firebase、そして Next.js まで解説した本は貴重だということで今年の初めくらいに購入して読んでみた。平易な語り口で JavaScript や React の基本から説明されておりわかりやすい。その半面、React や Next.js を勉強するのならやはり公式のドキュメントやウェブ上の情報でもじゅうぶんである感は否めない。特にこの本に関して言えば、(出版時期の問題なので仕方ないのだが、)React に関してはほぼクラスコンポーネントによる説明で関数コンポーネントや React Hooks の説明はなされていなかったり、Next.js では SSG や ISR の説明がなかったり、Firebase では Firestore ではなく Realtime Database を扱っていたり、情報が古い部分が多い。そのため、これから入門するという人には積極的に薦めることはできないように思うが、React 自体の考え方に馴染めず苦しんでいる場合などは一読の価値があるものと思われる。
  14. 詳論 文化人類学 - 桑山 敬己、綾部 真雄(ミネルヴァ書房)


    学生時代から、文化人類学という学問分野に(まったく専門外の素人ながら)強く惹かれており、大学でも文化人類学の講義を履修したり、山口昌男の本やフレイザーの金枝篇を読んだりしていた。今年の夏、本屋で「文化人類学をより深く、詳しく学びたい読者のために」という帯のこの本を見つけて衝動買いした。「文化相対主義の源流と現代」、「言語人類学」、「宗教と世界観」、「儀礼と時間」、「構造主義の現代的意義」など、様々な著者によって合計 24 のトピックで解説がなされている。24 もテーマがある本書の目次を見るだけでわかるとおり文化人類学という学問分野はきわめて射程が広く、グローバリゼーションが進み、政治的主張や民族による分断が深まる現代においてその重要性は増しているように思う。
  15. すごいHaskellたのしく学ぼう! - Miran Lipovača, 田中 英行, 村主 崇行(オーム社)


    この本を買ったのは昨年の春だったかそのあたりで、何回か読んでは挫折していたのだが、今回改めて挑戦し読破した。評価が高い本というだけあって、面白く読み進めながら Haskell あるいは関数型プログラミングの流儀を理解することができる。モナドが「文脈付きの値」というのもわかりやすかった。たとえば、Maybe モナドは「失敗するかもしれない計算」という文脈を表すというのは Maybe という名前からも直ちに理解できるのだが、リストモナドが非決定性(複数の計算結果や複数の候補)を表すというのは新鮮な発想だった。この本を読んで学んだ関数型プログラミングの知識や考え方は、JavaScript など他の言語でプログラミングを行うときにも役に立っている。
  16. 数学ガールの秘密ノート/やさしい統計 - 結城浩(SB Creative)


    統計は何回勉強しても身についた気がしない分野の 1 つで、そんなわけである日統計に再入門しようと思っていたところ、図書館でこの本を見つけ、借りて読んだ。各概念の説明に留まらず、分散や偏差などを知ると何が嬉しいのかという背景的な部分や仮説検定の手順、考え方についてかなり丁寧にわかりやすく書かれている本。
  17. 完全独習 ベイズ統計学入門 - 小島 寛之(ダイヤモンド社)


    ベイズ統計学を改めて勉強しようと思い読んだ。この本では、面積図(各事象の確率が面積に相当する)を使いながら、計算過程を 4 つのステップに分けて説明がなされている。ベイズ統計の説明の中では今まで読んだ中で最も(と言っていいほど)わかりやすかった。
  18. 論理学 - 野矢 茂樹(東京大学出版会)


    プログラムを扱う者としては古典論理や直観主義論理を理解していなくてはならないのではないか、という天啓がある日降りてきて読み始めた本。真理表を作って真理値分析を行う命題論理、それに量化を導入した述語論理、それぞれにおける意味論と構文論、パラドックス、直観主義、そしてゲーデルの不完全性定理と、論理学における基本事項がぎゅっとまとまっている本。誤解を生みやすい部分やわかりづらい部分のほとんどすべてが先回りして潰されているうえ、2 人のキャラクターと著者である野矢氏の会話形式になっていることもあり、論理学というとっつきにくい分野の本としてはかなりわかりやすい。例題や演習問題も豊富。
  19. 数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3) - 結城浩(SB Creative)


    この本を買ったのは、本書が発売されて間もない、自分が高校生の頃だったと思う。当時は、本書前半のペアノの公理や集合論についてなんとなく理解するのがやっとで、後半のゲーデルの不完全性定理については理解できなかった以前に読むことを諦めた記憶がある。続いて、昨年 2019 年に読み返し、今度はゲーデルの不完全性定理の証明部分をノートに書き写しながら追ってみて、ほぼ理解できないまでもいちおう「読んだぞ」という気になった。そして、今年、野矢氏の『論理学』を読んだあとで再度挑戦してみた。各部分(この式を変形するとこうなる、など)はなんとか追っていけるものの、証明全体の流れとなると相当に理解が怪しく、『論理学』と本書を両手に持ちながら「ここの記述は『論理学』で言うここの記述か」などと比較しつつ読み進めていった。ただ、やはり使わない知識はすぐさま頭から抜け出てしまうので、近いうちに 4 度目の挑戦をする日が来るかもしれない。
  20. ちくま評論選―高校生のための現代思想エッセンス - 岩間 輝生、佐藤 和夫、坂口 浩一(筑摩書房)


    高校生の頃、現代文の教材として指定されていた評論集。あるときその存在を思い出して、本棚から引っ張り出してきて読んだ。30 の評論が掲載されており、そのテーマもポストモダン、脱構築、解釈学、戦争、文学など多岐にわたる。副題のとおり高校生向けとされている評論集だが、大人が読んでも学ぶところは多い。
  21. ひとのことばの起源と進化 - 池内 正幸(開拓社)


    大学で言語学だったか何かを履修したときに教科書として使われていた本を改めて読んでみた。ひとのことばに共通して存在する特徴を、併合(二つの要素(語あるいはそれまでに作られた構造など)を取ってきて、それらをひとまとまりにすること)と標示付け(ひとまとまりにされた要素に対して、「動詞」や「名詞」、「時制句」などラベルを付けること)およびそれらが生み出す階層的句構造(樹形図で示すことのできるような階層的な構造)として位置づけ、数々のエビデンスや生物学的な進化理論を援用しながら、ひとの言葉の起源は 7〜6 万年前頃の、出アフリカ以前に創発したとする仮説を述べた本。また、ひとのことばに関してはまだ統一的な合意を見ていない論点も少なからず存在するとして、学問の垣根を超えた学際的な共同研究の必要性を説いている。
  22. 社会思想史を学ぶ - 山脇 直司(ちくま新書)


    自然が人間の技術によって征服されていく過程として自然史を捉えたベーコン、自由の意識の進展として世界史を捉えたヘーゲル、人民の解放のプロセスとして歴史を捉えたマルクスらに代表される、近代啓蒙思想の限界を振り返るとともにそれらがもたらした正の遺産を再評価し、また、欧米で流行したポストモダン思想も局所的で不十分なものであるとして、比較社会思想や解釈学の分野を発展させていく必要性を訴えた本。近代から現代に至るまで数々の思想家たちの思想を相互に比較しながら解説されており、思想史を理解するのにうってつけの本。